表現力を高めるためのバレエ音楽講座2025年1月20日【大海遊楽の恋するバレエ】

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体験レポート

1月20日に開講されました、『表現力を高めるためのバレエ音楽講座』に参加させていただきました。
瀬川先生の心のこもった音と解説をお聞きしながら、自分の感性や音楽性と向き合える貴重なお時間でした。

一時間目は『和声解析の基本』という内容で、音楽や和声について解説いただきました。音にどのような性質や趣があるのか、そしてそれを自分はどう感じるのか一人ひとり感じる時間でもありました。

私の場合、悲しい音とされている短調を聴いても特に悲しい気分にはならず、どちらかというと悲しさに落ち着くイメージだったり、色っぽさを感じたりなど、音楽に対して天邪鬼的な感覚があることに気づかされました。

二時間目は『実際のバレエ音楽の音楽性を学ぶ』という内容で、チャイコフスキーの『白鳥の湖』から「情景」、そしてプロコフィエフの『ロミオとジュリエット』から「少女ジュリエット」を解説していただきました。瀬川先生のご演奏と、実際に楽譜を見ながら、曲の持つ音楽性ととことん向き合うお時間でした。

『白鳥の湖』の第2幕のオデットに関しては、私はすでに大きな悲しみを感じることのできる心は失っているのではないかと思っています。一度心は壊れているのではないかなと思います。そのため、王子の手を最初拒むのだと思います。期待するほどの体力も、気力も、もうないように思います。なので、その後のアダージオがオデットの心が溶かされていくような音楽で、やはり『白鳥の湖』はバレエ以前に音楽と向き合うことの楽しさを教えてくれる作品なのだと感じました。

そして、瀬川先生が通して弾かれる前に解説してくださった、一瞬短調が入るところからの流れが、私が『白鳥の湖』の音楽の中で一番好きなところだったので解説していただけて嬉しかったです。答え合わせにもなりました。瀬川先生は「淡い期待」と仰られておりましたが、私には「淡い期待」は非常に刹那的で、そのあとすぐ予知が始まるのではないかと感じました。オデットはどこかで自分の運命を知っているような感覚が子供の頃からありました。白鳥の姿に変えられてから、オデットは不幸や不安でいることが当たり前になりすぎて、長調が織りなす幸福がオデットの痛みのような音に聞こえてくるような気がしました。マシュー・ボーン版の第4幕の終盤に、同じ音が使われていて、一番振り付けの中では心に残っています。

『少女ジュリエット』では私が記憶している限り、Cパートのような音が出てくるシーンが3つあり、1つ目が両親がジュリエットの部屋へ訪れるシーン、2つ目がロミオが追放され朝に別れるシーン、3つ目がジュリエットが仮死状態から醒めるものの、ロミオの死を嘆き自分も自死するシーン。どのシーンもジュリエットが生存するかしないかという問いに直結するような気がしています。

ロミオに出会う前の13歳のジュリエットにとって、生存に関わる重要な存在である両親は生の象徴なのかなと思います。その生の象徴がロミオになって、そしてロミオがいなくなって、両親には突き放され、計画があったのにもかかわらず、目覚めたら隣でロミオが死んでいる。とても私にはジュリエットの死はしっくりきてしまいます。音楽が整理してくれました。

マシュー・ボーン版の『ロミオ+ジュリエット』では、この「少女ジュリエット」は矯正施設に新しく入ってきたロミオにマキューシオとバルサザーがイタズラをして服を脱がせまくるというシーンで使用されています。ジュリエットは出てきませんが、プロコフィエフのイタズラをイタズラで返していて、私はとても好きな演出です。

『ロミオとジュリエット』はバレエに限らず好きな作品なので、次回はロミオが薬を飲んで自死するシーンの解説をお聞きしてみたいです。ジュリエットが息をしていないことを感じて絶望するシーンですが、1幕のバルコニーのシーンの旋律がこちらに使われていると思います。幸せ絶頂だった音が絶望に変わるところがとても好きです。マクミラン版の振り付けでは同じ旋律のところを同じ振り付けで対比にしていると思っています。そこがとてつもなく悲しいです。瀬川先生のような音楽家の方の解説があると、途端に自分の音楽の感じ方にも自信が持てるので、次回も楽しみにしております。

二つの講義を受講して、より作品の解像度が上がりました。私は踊ることはもうしないかもしれませんが、教師として生徒と関わったり振付をする際に、振付という固定概念を与える前にまず音楽を好きなように解釈する時間を大切にしたいなと思いました。自分が作品を作るとしたら、それがあってからの振りの方が私はしっくりくるなと思います。作品を踊るとなると、たくさんのやるべきことがありますが、音楽を味わう時間も大切にしてほしいです。

長くなりすぎてしまいましたが、音楽って本当に素敵です。そんなありきたりな感想になってしまうほど、そして講座ということを忘れてしまいそうになるほどに、贅沢なお時間でした。

よりバレエを楽しめるようになりたい方、音楽と作品の繋がりについて理解を深めたい方は次回開催の際には是非ご参加ください。きっとあなたのバレエがもっと豊かに、そしてバレエの深層に触れられるはずです。


文:大海遊楽

【大海 遊楽 プロフィール】

6歳よりバレエを始める。
2016年14歳 Hearts&MindsBalletConcursにて、ロシア国立ボリショイバレエ学校サマースカラシップを受賞。サマースクールにて年間留学オーディションに合格し、翌年より同校に留学。
バレエ安全指導者資格ベーシックコース、プロフェッショナルコース修了。
バレエ安全指導者資格認定バレエ姿勢ベーシックインストラクター。
バレエジャポン専属アートライター


表現力を高めるためのバレエ音楽講座

2025年1月20日(月)
①1『和声解析の基本
基本的で分かりやすいクラシック音楽を用いて、音楽とは、和声とはなんたるかを解析していただきます。
※楽譜が読めなくても大丈夫です。音楽の知識は問いません。

②『実際のバレエ音楽の音楽性を学ぶ』
①で学んだ和声解析をもって、実際のバレエ音楽を題材にどのような音楽性となっているかを説明していただきます。

https://safedance.jp/ws/music_2025_1_20/

瀬川 玄 先生プロフィール】

静岡県浜松市に生まれ、父親の転勤に伴い幼少年期をアメリカ、ドイツ、フランスで過ごす。
日本帰国後、16歳の時にはじめてのソロリサイタルを開く。成城大学文芸学部芸術学科に籍を置きながら定期的に演奏活動を行う。
卒業後ドイツのヴァイマール・フランツ・リスト音楽大学にてクラウス・シルデに師事。在学中に全9回に渡るベートーヴェン・ピアノソナタ全32曲連続演奏会を成し遂げる。翌年に優秀な成績で卒業し活動の拠点を日本に移す。
日本帰国後はソロリサイタルをはじめ、サロンコンサート、室内楽、歌曲伴奏、コーラス伴奏、オーケストラとの協演、そしてレッスンや講座、ラジオのパーソナリティなどの活動を展開している。
2010年春より、東京・表参道にてクラシック音楽道場を主催。
2012年ドビュッシー生誕150年に際し全ピアノ独奏曲の演奏を達成、翌年には全曲単日演奏に成功する。
2020年のコロナ禍以降、YouTube「クラシック音楽道場」にて楽曲解説・和声解析を発表中。
https://www.youtube.com/@classic.ongakudoujou

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