充実した日々に訪れた試練
バレトンインストラクターに慣れてきた頃に、もう少し働く幅を広げていきたいと考えていました。
フィットネスクラブでのインストラクターも検討しましたが、身体が資本の仕事の大変さを経験していたことや、子供の急な体調不良への対応、さらに「自分の強みは何か」を手探りしている最中で、大人数を前に堂々と惹きつける自信がまだなかったこともあり、なかなか踏み切れませんでした。
そんな頃、バレトンの運営会社の事務の募集を見つけました。「これだ!」と思い、すぐに応募。こうしてインストラクターと事務仕事の二足の草鞋を履くことになりました。
子供も成長し手が掛からなくなり、仕事もプライベートもやっと充実。こんなに自由に時間を作れる日が来るとは思ってもみませんでした。しかし、そんな頃、長男に異変が起き始めていました。
4年生の2学期初日、学校や友達が大好きな長男が「お腹が痛い」と言いながら登校しました。
もともと身体が弱く、これまでもお腹の痛みを訴えることがあったため、「友達に会えば治るだろう」と軽く考えて私は仕事へ向かいました。ところが、そんな日が何日も続き、学校から「お迎えをお願いします」と連絡が来ることも増えていきました。やがて頭痛や微熱を繰り返すようになり、さらに踵や背中の強い痛みまで訴えるようになったのです。
成長痛かと思ったものの、歩行が困難になり、トイレに行くにも抱えて運ぶほどになりました。徐々に目が虚ろになっていき、焦点が合わなくなりました。話しかけても目は開いているものの反応はなし。すぐに大きな病院で精密検査へ。しかし、痛いはずの体の痛みは全くなく、血液検査も脳や全身のMRIも異常なし。
結果、長男の心が発している全身の悲鳴でした。受診が終わるとまた体の激痛が始まりました。
今までも何度もお世話になっている病院だったので、病院が安心できる場所だったのでしょう。その姿を見て、心かと薄々感じていたことが確信に変わりました。
心の問題なことは分かったものの、長男自身も原因が分からず、お腹や頭が痛くなるから学校へ行きたいのに行くのが怖いと。学校では活発な方で、恥ずかしながらどちらかといえばトラブルメーカー。
いつの間にか複雑に絡み合った糸を、丁寧に焦らずほどいていかなければなりません。絡まった場所もほどき方も何も分からないまま。今まで気づけなかった自分を責めて、人間の脆さを知り、この出口の見えない真っ暗なトンネルは、心が折れてしまい、ただただ苦しい時間でした。
次回は長男のその後と、乗り越えた先に何が見えるのかについて綴っていきます。
進藤香織
編集部より
今回も貴重なご体験をお話してくださりありがとうございます。
コラムを拝読し、胸が締め付けられるような想いになりました。
お子さまが元気に学校へ通い、友達と楽しく過ごしていた姿から一転、原因の分からない体の不調と心の叫びに直面された経験は、想像を超えるご心痛であったことと思います。
「いつの間にか絡まった糸を、丁寧に焦らずほどいていかなければならない」という表現が、とても印象に残りました。子どもの心は大人が思う以上に繊細で、見えないところで複雑に絡まりながら、SOSを発しているのだと改めて気づかされます。
また、お仕事や家庭がようやく落ち着き、「自由に時間を作れるようになった」と感じられた矢先に訪れた試練。その対比は、子育ても人生も決して予定通りに進まないという現実を私たちに教えてくれます。だからこそ、「その時その時にどう寄り添い、どう選び取るか」が大切なのだと感じました。
私たち事務局としても、このコラムを通じて「心と身体は切り離せない」という当たり前のようでいて忘れがちなことを、改めて深く考えさせられました。指導者も保護者も、そして社会も、一人ひとりの心に耳を傾ける視点を持ち続けたいと思います。
次回綴られる「その後」のお話からも、また多くの学びをいただけることを楽しみにしております。
進藤香織先生プロフィール

桜井勢以子バレエ研究所にて桜井勢以子、石田泰巳に師事。
大学卒業後、ボディケアセラピストとしてボディメンテナス技術を習得。
バレエを取り入れたエクササイズのバレトン®︎インストラクター資格取得。
JADP認定乳幼児リトミックインストラクター®︎資格取得。
現在、桜井勢以子バレエ研究所にてバレトンクラスと親子バレエクラスの講師
バレエ安全指導者資格®ベーシック講座、プロフェッショナル講座修了。
バレエ安全指導者資格®︎認定講師。
【桜井勢以子バレエ研究所】
https://sakurai-ballet.com
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