変わらない想いに触れた日
バレトンに出会い、身体を動かすことの楽しさを感じると同時に、バレエの魅力も思い出していました。
とはいえ、もう一度バレエを踊れるほどの身体でもなく、勇気もありません。それでも懐かしさから、大学まで通っていたスタジオは今どうなっているのだろうと調べてみると、目に飛び込んできたのは、1969年から続く歴史あるスタジオの「移転」という知らせでした。
ジャンプの着地が痛くて音も響く板の床。雨の日には湿り気を帯びていた木のバー。
そんな、古くから時を刻んできた景色が思い浮かびました。
「なくなると分かったのなら行かないわけにはいかない」
動くはずのない身体にも関わらず、眠っていたバレエ用品を引っ張り出しました。
緊張と懐かしさを抱えて先生と再会したとき、感情を言葉にできず号泣してしまいました。
今その時を振り返るなら、こう言えるでしょうか。
歳を重ねて多くの変化があったけれど、変わらない姿で迎えてくれた先生と教室への感謝。
離れていたことへの後悔。
自分にとってここがかけがえのない場所だったという気づき。
子育てに必死で自分のことを後回しにして、知らず知らずに苦しんでいた時間の経過。
準備していなかった感情が一気に溢れ、驚くほどの涙になったのだと思います。
レッスンが始まると、全く動けない現実に落ち込む一方で、楽しさが勝っていました。バレエの魅力を改めて再確認した瞬間です。
ただ、月日の流れは確かで、先生ご自身の負担も増える中、しばらくしてから「指導をしてみないか」と声をかけていただいたことがありました。
長いブランクに加え、実力も実績も伴わず、嬉しい反面、引き受けることはできませんでした。
無力感を抱える一方で、何かしらの形で寄り添いたい。そう考え、バレトンインストラクターとしてクラスを持たせていただくことで、ほんの少しでも力になれればと願いました。
思いがけないタイミングで、自分が育ったスタジオに携わることになったのです。
子育てやコロナ禍、そして時間の流れ、すべての歯車がガチっとかみ合い、産後止まっていた私の中の時間がようやく動き出しました。
次回は、インストラクターとして働く中で感じた思いや、その頃長男に起きた異変について綴っていこうと思います。
進藤香織
編集部より
今回も大変貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
バレエのお教室は、生徒や子どもたちにとって成長を刻む場所であり、巣立つ場所であり、そして帰る場所でもあるのだと、改めて実感いたしました。日本のバレエ界を支えているのは大きなバレエ団だけでなく、日々生徒と真摯に向き合い続けておられるお教室の先生方であることを、あらためて深く感じさせていただきました。
学校には卒業があり、実家もいつかは離れることがある中で、バレエ教室は「そこにあり続ける場所」として存在し続けます。物心つく前から知ってくれている先生、そして「何者でもなかった自分」を受け止めてくれる場所。そこには他に代えがたい安心感があり、まさに人生の「ふるさと」と呼べる存在だと思います。
だからこそ、先生という存在の責任の大きさを強く感じます。同時に、一人の生徒であった進藤先生が、今は母として、また先生として学びを重ねておられる姿は、多くの方にとって参考となる姿だと思います。
そして、進藤先生が毎回語ってくださる「バレエは人生の中で途切れることはあっても、決して消え去ることはない」というメッセージは、今進路に揺れている多くの方々に励ましと希望を与えてくれるものだと思います。
次回の記事で綴られるインストラクターとしてのご経験や、お子さまとの物語に触れられることを、心より楽しみにしております。
進藤香織先生プロフィール

桜井勢以子バレエ研究所にて桜井勢以子、石田泰巳に師事。
大学卒業後、ボディケアセラピストとしてボディメンテナス技術を習得。
バレエを取り入れたエクササイズのバレトン®︎インストラクター資格取得。
JADP認定乳幼児リトミックインストラクター®︎資格取得。
現在、桜井勢以子バレエ研究所にてバレトンクラスと親子バレエクラスの講師
バレエ安全指導者資格®ベーシック講座、プロフェッショナル講座修了。
バレエ安全指導者資格®︎認定講師。
【桜井勢以子バレエ研究所】
https://sakurai-ballet.com
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