『 イヴォンヌ・レイナー『特権(Privilege)』から考える踊ることと”女性” 』杉本音音先生(バレエ安全指導者資格修了講師コラム)

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 イヴォンヌ・レイナー『特権(Privilege)』から考える踊ることと”女性” 

イヴォンヌ・レイナーは1934年サンフランシスコ生まれのダンサー/振付家/映画監督で、「ジャドソン・ダンス・シアター」の一員として、ポストモダン・ダンスと呼ばれる新たなダンスの概念を形成しました。 

イヴォンヌ・レイナー作『特権(Privilege)』は、数本のフィルムを組み合わせた実験的な構成で、中年女性の更年期をテーマに性的アイデンティティ、人種、階級の不平等について迫る劇映画です。 

レイナーは振付家ですが、この作品ではダンスとしての特性をほとんど持ちません。 
唯一、″ダンス″を個人的に感じたのは、エンドロールに近い頃に、この映画のアフターパーティーのような映像が映し出された時でした。 

女性、男性、若年、中年、肌の色… 関係なしに、出演者含め、映画に関わったと思われる人々が、ドリンクを片手に会話をし、笑い、時には踊り、ハグをしている。その後に《Utopia(ユートピア)》というキャプションが現れる。レイナーが求める世界はこれだったのか…?映画の中で様々な映像ならではの演出(=映像の特権)や、監督としての指示(=監督の特権)が施されているが、このシーンではコントロールできない/されない(カメラの視点のみ意図的にコントロールされている)、自然に交わり、気づいたら発生する… 
そのやりとりや高揚感に″ダンス″を感じました。 

映画の中で「女性は年老いて、月経が終わった瞬間に、女性としての価値がなくなる」ことが言われていました。
自分が痩せすぎていた時は生理なんてこなくていいやと考えていたので、若い女性の特権か… もったいないことをしたなあ…と反省もしましたが、言うまでもなく、女性の価値はそこで規定されるものではないはずです。確かに、若い女性は、子どもが産めるという特権を持っています。しかし、月経が終わったら女性として用無しか…?もっと様々な価値を持っています。 

また、若い女性ー未成年にはレイプの問題があります。世界を見ると、10代にもならないうちにレイプされ、出産する女の子もいます。社会的特権は男性にある中で、子どもが産めることは女性としての特権ですが、そのためだけに女性が産まれている訳ではありません。多様な権利が認められるべきなのです。 

最近、日本人アーティストが海外滞在中に、現地の未成年の女の子に誘うようなDMをしたことが問題となり、活動停止となった例を聞きました。一方、日本ではDMくらいで厳しすぎるのでは?という意見もありました。まだまだ日本はこのような問題に対する見方が甘いと言えます。 

女性の価値について、年代によって異なる課題があり、個人的には、子どもを産まない(産めない)女性の地位が気になっています。 
バレエの歴史を見ると、男性だけが踊ることを許されていた時代、女性が見世物になっていた時代、と様々に辿ってきました。 

人前で踊るということは、身体を晒すということでもあります。 

バレエには役があり、その中に入り込むことができます。しかし、踊っているのは″その人″自身。ダンサーの意志がなければ、役は生きてきません。また、コンテンポラリーダンスではダンサー自身、踊り、作品がイコールまたはニアリーイコールで繋がっていることも多くあります。 

ここで大切なのは「その人が特権であること」なのではないかと思います。つまり、その人らしさが踊りにあること、唯一無二として存在し踊ることではないかと思います。 

男女、国籍関係なしに様々なことが許される、多様性の時代といわれる現代。差別や人権の問題はさらに複雑化しているように感じます。 
踊ることは本来、老若男女、国籍関係なしに権利があります。そしてこれらを超えられると思います。 
確かに、生物学的にあるべき姿、役割もあります。「女性らしさ」「男性らしさ」なんて古い考えに思えるかもしれませんが、まだ課題の多いのが現状と言えます。 
その二極化された区分ではなく、″その人らしさ″ こそが特権であると考えられたらなと思います。穏やかにならない情勢、なかなか難しいですが… 

レイナーは80歳を過ぎた今も現役振付家/ダンサーとして活動を続けています。 

私も歳を取っても、女性として、1人間として、健康で踊り続けたい!という個人的な願いで締めくくります。 

杉本音音 

参考: 恵比寿国際映画祭webサイト 
https://www.yebizo.com/jp/artist/detail/68

杉本音音先生プロフィール

1996年生まれ。東京都世田谷区出身。4歳より新体操とクラシックバレエ、15歳でコンテンポラリーダンスに出会う。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。新体操指導歴6年。

様々な振付家の作品に出演。ワークショップも行う。階段を振付として使用したダンス作品「6steps」プロジェクトメンバー。(コンセプト・発起人:木村玲奈)

その他、音楽・写真・テキスタイル・美術・映像など他分野とコラボレーションでの企画、振付、パフォーマンスを行う。身体を以って紡ぐ・思考することを目指して日々″今日のダンス″を探している。

【杉本音音先生オフィシャルサイト】
https://neonsugimoto.jimdofree.com/

杉本先生へのご質問、ご感想等はこちらよりどうぞ!
contact@ballet-japon.com

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