バレエジャポン®︎よりメッセージ
このたび、本シリーズ初となる男性ダンサー・指導者、水島裕哉先生の連載がスタートいたします。
水島先生は、ローザンヌ国際バレエコンクールへの出場をきっかけにカナダへ留学。学校生活を経て、アメリカ、そして日本でプロダンサーとして活躍されました。経歴だけでも目を引きますが、さらに印象的なのは、その謙虚さと学びに対する貪欲さです。常に生徒の課題に向き合い、教師としてできることを探し続ける姿勢がとても素晴らしい先生です。
また、華やかな舞台経験だけでなく、一般企業への就職という異色のご経歴もお持ちであり、その歩みや選択の背景は多くの方にとって大きなヒントになるのではないかと思っております。機会があれば、そうした経験についても語っていただけることを楽しみにしています。
華やかに見えるキャリアの裏側にある、水島先生が真摯に向き合ってきた体験やご決断は、きっと読者の皆さまにとっても共感や学びを与えてくれるはずです。
水島先生、どうぞよろしくお願いいたします。
バレエを通じて広がる私の世界
みなさん、はじめまして。
今回、バレエジャポンさんにてコラムを掲載させていただくことになりました、水島裕哉ともうします。
私は3歳から広島でバレエを始め、17歳のときにローザンヌ国際バレエコンクールをきっかけにカナダのロイヤルウィニペグバレエ学校へ留学しました。3年間の学びを経て、アメリカのサラソタバレエ団に入団。その後、日本に帰国しスターダンサーズバレエ団に所属しましたが、コロナ禍を機に一度バレエを離れ、専門学生として学び直しました。卒業後は一般企業に勤務し、現在はフリーのダンサー兼指導者として活動しています。
これから一つ一つの思い出などを書いていきたいと思います。
今回書かせていただくコラムの中で、バレエと共に生きる上でのヒントになることがありましたら嬉しいです。
今日はその中から、私がバレエ学校に在学していた頃の経験を共有したいと思います。
バレエを学ぶ中で、私が最も心に残っているのは先生からいただいた言葉です。ある日のレッスン中、先生は私にこう言いました。
「君はいつか挫折する時が来ると思う。だけど、人間は転けても立ち上がって前に進むことができる。バレエもバレエ以外でも同じで、転けても前に進むことができるってことを覚えておきなさい。それがやがてあなた自身を助けてくれるから。」
その言葉は、私にとってただの指導ではなく、人生における大きな指針となりました。オーディションや試験で不安や緊張に押しつぶされそうなときも、この言葉を思い出すことで「転んでも立ち上がればいい」と前に進む勇気を持つことができました。挑戦するたびに、この言葉が背中を押してくれたのです。
もうひとつ忘れられない経験があります。バレエ学校で行われた生徒だけの発表会です。当時の私はリフトがとても苦手で、どうしても相手を持ち上げられず、何度挑戦してもうまくいきませんでした。悔しさや焦りで諦めそうになったこともあります。それでも先生のアドバイスを素直に受け入れ、何度も繰り返し挑戦し続けました。すると本番の二週間前、ようやくリフトが安定して上がるようになったのです。
そのときに学んだのは、ただ筋力や技術を磨くだけでは足りないということでした。大切なのはパートナーとの呼吸を合わせること、互いを信頼し合い、協力することです。そうして力を合わせた先にこそ、成功の喜びが待っていました。リフトが成功した瞬間、パートナーと喜びを分かち合えたことは、今でも鮮明に覚えています。これは単なる技術の習得ではなく、人との関わりや信頼の大切さを体感できた経験でした。
こうした体験を重ねるうちに、私は次第に気づいていきました。バレエの学びは、バレエの枠にとどまらないということです。舞台での挑戦や失敗、仲間との協力や信頼関係、先生からの言葉の数々は、日常生活や人生そのものを豊かにしてくれる糧となりました。
私にとってバレエは、技術を磨くだけでなく、自分自身を成長させ、人生を深めてくれる存在です。これからも私は、舞台やレッスンで得た学びを胸に、前に進み続けたいと思います。そして同じようにバレエを学んでいる方々にも伝えたいです。バレエは踊りそのものを美しくするだけでなく、人生をより豊かにしてくれると思います。
水島裕哉
バレエジャポン編集部からの質問
先生がなぜそのような言葉を投げかけてくださったのか、今の自分からはどう解釈されますか?
当時はまだ心のコントロールがうまくできていなかった為、レッスン中でもできないステップがあるとくじけてしまう時が多くありました。その様子を見て先生は当時の僕に必要な言葉をかけてくれたんだと今は思います。
水島先生の中で、なぜそれほどまでにこの言葉には力があったのでしょうか?
私は昔から何か物事に取り組む時に「諦めないこと」を念頭に置いてバレエをしていたので、先生からの言葉に影響を受けて良い方向に持っていこうとその時に思いました。もちろん、私の精神的な弱さを自分自身で克服したいとも思っていたので、その言葉が僕にとって心の支えになったと感じました。
リフトがうまく上がらなかったご経験から、成功につながった一番大きな要因は何だったと思いますか?
1番大きな要因はトレーニングです。私は当時とても華奢で筋力が不十分でした。それはリハーサルの時から私自身も感じていた為、空いた時間でジムに行って筋力トレーニングをしていました。バレエ学校のジムには理学療法士が常に在住していた為、アドバイスをいただきたながら日々努力した成果が成功に繋がったと思います。
バレエでの学びがバレエの枠にとどまらないと感じられた日常での出来事はありますか?
私はバレエで特に精神的な部分が鍛えられたと感じます。それを実感したのはバレエとは別のお仕事をしていた時でした。当時は一般企業の営業をしており、顧客から素っ気ないお言葉をいただいたりした時に自分の心の中で切り替えが素早くできるようになったこと。そして、できるだけ何事もポジティブに考え、ポジティブな言動をするように意識したことで周りも笑顔に変えれるようになりました。今はバレエ以外で携わる方々にも自分からポジティブな発言をして周りに笑顔を増やせているなと実感しています。
編集部より
バレエで培った技術や精神が舞台の上で活かされることはもちろん素晴らしいことですが、それらが他の時間や新たなチャレンジにも確実につながり、活かされるという事実こそ、多くの子どもたちに大きな勇気を与えてくれるのだと感じます。
コンクールやオーディションではどうしても結果に目が向きがちですが、実際に結果を出せるのは一握り。しかし、結果がどうであれ、その過程で身につけた心や身体の強さこそが、バレエが与えてくれる大きな宝物だと、水島先生のお話から改めて実感しました。
また、自分からのアプローチが周囲に良い影響を与えられること、自分の力で自分の世界を形づくっていけることを、今回のコラムを通して教えていただいたように思います。
物腰柔らかな水島先生と共に踊るダンサーはもちろん、先生に学べる生徒の方々は本当に幸運だと感じます。ぜひ本コラムを読んで「レッスンを受けてみたい」と思われた方は、水島先生のInstagramもチェックしてみてくださいね♪
次回のコラムも楽しみにしています!
水島裕哉先生プロフィール

2000年より松本ナツコモダンバレエ研究所にてバレエを始める。
2003年 インターナショナルバレエアカデミーに移籍。
2014年 ローザンヌ国際バレエコンクール 本選出場
2014年〜2017年
カナダロイヤルウィニペグバレエ学校
入学&卒業
2017年〜2019年
アメリカサラソタバレエ団 入団
2019年〜2020年
スターダンサーズバレエ団 入団
2024年〜現在 広島を拠点に多数のバレエ教室にて指導、フリーで活動中
実績
2004年〜2014年
R.A.D Graded Examination Primary, Grade 1 – Grade 8 最高成績のDistinctionで合格
2010年〜2013年
R.A.D Vocational Examination Intermediate, Advanced Foundation, Advanced 1&2 最高成績のDistinctionで合格
2012年
All Nippon D.A.T.E Classic Ballet Competition in Miyagi
ジュニアA1部門 第5位
2014年 ローザンヌ国際バレエコンクール 本選出場
カナダロイヤルウィニペグバレエ学校サマースクール フルスカラシップ受賞
バレエ安全指導者資格ベーシックコース修了。
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