『バレエとのちょうどいい距離感』進藤香織先生(バレエ安全指導者資格修了講師コラム)

  • URLをコピーしました!

バレエとのちょうどいい距離感

今回は、大学で出会ったスキーについてお話したいと思います。

大学でやりたかったことのひとつが「これまでに経験のないスポーツに挑戦する」こと。そんな中で出会ったのがスキーでした。夏場に何をするのかもよくわからないまま、ただ興味だけで飛び込んだスキーサークル。そこは学生大会で優勝を目指す本格派のサークルで、オフシーズンは週3回の筋トレや長距離ランニングなど、なかなかハードな日々が待っていました。それでも、週2回のバレエは継続していて、気持ちのバランスを整えるひとときだったように思います。ただ、スキーシーズンに入ると生活は一変。12月から3月まで、テスト期間を除いては雪山で過ごす日々が続き、バレエの時間を取ることがだんだん難しくなっていきました。

その一方で、スキーを通して「人に指導する」という新しい経験にも出会います。スキー場でのインストラクターのアルバイトでは、修学旅行生や一般のお客様に技術を伝える中で、相手ができるようになったときの嬉しさを初めて実感しました。夏場のトレーニングではトレーナーを任され、メニューを考え、仲間を引っ張っていくことで、少しずつ自信も培われていきました。

思い返してみると、昔なんとなく思い描いていた「体育の先生になりたい」という夢も、今では腑に落ちる気がしています。バレエで舞台に立ってきた経験も、人前に立つときの度胸として生かされていたのかもしれません。自分から率先して動くタイプではありませんでしたが、目の前のチャンスに夢中で向き合ううちに、少しずつ自発的に行動できるようになっていきました。

“あの頃のバレエとの距離感”は、様々なことに挑戦し、いろんな経験を重ねるためにもちょうど良いものだったのだと思います。

次回は、社会に出てからの自分との向き合い方について綴っていこうと思います。

進藤香織

バレエジャポン編集部からの質問

新しい環境で「新しいスポーツに挑戦しよう」と思えたのは、どのような経緯からでしょうか?

小学校の時に仲良い友達と中学ではバレーボール部に入ろうと決めていたのですが、引っ越しのためにそれが叶わず、馴染めない環境の中、本心ではない人数が多くて当たり障りのないバドミントン部へ。
高校でもバレエと両立できそうなバドミントン部を選んでいました。妥協や周りに流されて決めたことにしっくりきていなかったので、今度こそ自分の意志で新しいことにチャレンジしたいと思ったからです。

その当時の進藤さんがバレエを続けていたのは、それまでの習慣からですか?手放すという選択肢は考えましたか?

年齢とともに発表会で、役がいただけたり、パドドゥで踊らせていただいたりと、上手い下手でなくバレエを続けていることで、発表会に対する責任感や達成感が大きくなってきたことが、楽しみの一つに加わってきたことが継続に繋がっていたと思います。

バレエを「気持ちのバランスを整えるひととき」と感じるようになったのは、いつからでしょう?

その当時はこなしていただけだと思うのですが、嫌にならずにこなせていたということは、そこでバランスをとっていたのだなと今は思います。

スキーに打ち込む中で、バレエとの距離に変化は感じましたか?(執着、寂しさ、割り切りなど)

雪山から帰ってきたときにスタジオの鏡に写る自分の顔が雪焼けしていたことで、現実に引き戻されたことを覚えています。それと同時にバレエはこの先も続けていくことはできるけど、大学生活は今しかないという思いが芽生えてきました。

雪山での生活はどんな風に日常や心に影響を与えましたか?

集団生活なので、時間厳守と挨拶、上下関係、仲間の大切さ、家に帰った時の温かさ。良いことも悪いことも書ききれないほどの経験をしたので溢れてしまいます。これだけお話しする機会があれば、またどこかで(笑)

バレエが生活から少し遠のいた時期、自分にとってそれは喪失感でしたか?それとも自然な流れでしたか?

様々なトレーニングや運動をして充実していたので、バレエがないことへの喪失感はこの時はまだ感じていませんでした。

指導する立場になったとき、一番難しかったこと・戸惑ったことは何ですか?

思っていることを、理解してもらえるように言葉で伝えることです。

技術を伝える中で、相手ができるようになった時の「嬉しさ」は、他のどんな感情と似ていましたか?

似ている感情はうまく言えないのですが、嬉しさを説明すると、不安やプレッシャーの中で自分の経験や努力が誰かの役に立てたと実感できたときの、小さな自信と喜びでした。一人では得られなかった感覚です。

「教える」ことと「表現する」ことの違いについて、バレエとスキーを通してどう感じましたか?

どちらも「伝える」という点では共通していますが、教えることは、常に相手がいて成り立つもの。自分に自信がないと、その不安に押しつぶされてしまいそうになります。表現することは、自分の思いだけで完結できるもので、自分の内側と向き合うことでしょうか。

トレーナーを任されたことで、自分の中にどんな変化や発見がありましたか?

任されたらやるしかない。任されたということは信頼してもらえている証拠。事前準備をしたりイメトレを重ねたりすることで、自信にもつながっていきました。そして、自分のことだけでなく、全体を見渡す力が自然と身についていったということ。個人として動くのとはまた違う視点が育った経験だったと思います。

改めて、「体育の先生になりたかった自分」と「今の自分」とはどんなところでつながっていると思いますか?

身体を動かすことは楽しい!と思うことを色んな人に伝えたい、楽しさを分かち合いたいという思いがずっとあったのかな。

過去の自分に「今のあなた」から何かひとことアドバイスを贈るとしたら、何と言いたいですか?

間違ってなかったよ!そのまま突き進め!!

「ちょうどいい距離感」とは、どんな感情のバランスを指していると思いますか?また、ちょうどいい距離感になれたのは、自然にですか?自分でそうしたからですか?

自然と「ちょうどいい距離感」はできていました。好きなことを続けながらも、他にやりたいことを我慢することなく、いろんな経験ができたことが、無理なく継続できた理由だと思います。しんどいときにはバレエでリセットし、他にやりたいことがあるときは少しお休みする。そして、また戻ってきたときにはやっぱり楽しい。この繰り返しができる関係こそ、私にとっての“ちょうどいい距離感”だったのだと思います。

編集部より

バレエを習っているからといって、すべての人がプロを目指しているわけではありません。
けれども、それは決して「真剣ではない」という意味にはなりません。
むしろ、プロを目指す方や実際にプロになられた方には見えない景色を、進藤さんのご経験を通して知ることができるというのは、本当に貴重な体験であると感じます。
これまでのコラムからも伝わってくるように、進藤さんにとってバレエは、まるで長年の親友のような存在。
近すぎず、離れすぎず、ちょうどよい距離感で寄り添ってくれる存在として、人生のさまざまな場面を共に過ごしてこられたのだと思います。
誰もがそのようにバレエと向き合えたなら、きっと苦しい時にも、バレエという名の「友達」がそっと手を差し伸べてくれるのではないでしょうか。
ぜひ、今回のお話もご自身のバレエとの関係を見つめ直すきっかけとしていただければ幸いです。
進藤さん、今回も貴重なお話をありがとうございました。

進藤香織先生プロフィール

桜井勢以子バレエ研究所にて桜井勢以子、石田泰巳に師事。
大学卒業後、ボディケアセラピストとしてボディメンテナス技術を習得。
バレエを取り入れたエクササイズのバレトン®︎インストラクター資格取得。
JADP認定乳幼児リトミックインストラクター®︎資格取得。
現在、桜井勢以子バレエ研究所にてバレトンクラスと親子バレエクラスの講師
バレエ安全指導者資格®ベーシック講座、プロフェッショナル講座修了。
バレエ安全指導者資格®︎認定講師。

【桜井勢以子バレエ研究所】
https://sakurai-ballet.com

進藤先生へのご質問、ご感想等はこちらよりどうぞ!
contact@ballet-japon.com

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次