バレエジャポン®︎よりメッセージ
このたび、バレエジャポンにて、バレエ安全指導者資格®︎コースを修了された先生方によるコラムシリーズを掲載することとなりました。
本資格を受講される先生方は皆、生徒一人ひとりの健康と安全を守り、バレエがその人にとって「良いものであること」を心から願って学んでくださっています。
そんな先生方のバレエへの思いや、生徒さんへの温かなまなざし、そして日々の生活やご家族との関わりの中で感じられていることを、皆さまと分かち合いたい、そんな想いから、今回のコラムシリーズを企画いたしました。
今回は振付家、コンテンポラリーダンサーとしてもご活躍され、同時に新体操の先生としてもご活動されております杉本音音先生のご紹介です。
そして杉本先生は、ご自身も神経性やせ症のご経験から、踊るための身体、ダンサーと食、栄養についてご体験を元にしたとても貴重なお話をしてくださいます。
プライベートなことでもあり、なかなか当事者の方にお話を伺うのも難しい中で、ご協力いただけて感謝しております。
一人でも多くの方にまずは知っていただき、予防とケアとにつながることも願っております。
杉本先生、どうぞよろしくお願い致します。
神経性やせ症について~きっかけ編~
はじめまして。杉本⾳⾳(ねおん)です。
私は、4歳からクラシックバレエと新体操を習い、中学⽣の時は新体操に打ち込んでいました。
その後15歳でコンテンポラリーダンスに出会い、⾼校・⼤学進学後、現在は、ダンサーとしてはコンテンポラリーダンスの活動、指導者としては新体操を⼦どもたちに教えています。
さて、突然ですが「神経性やせ症」をご存知でしょうか?
摂⾷障害の1つです。私は26歳の時に神経性やせ症により2ヶ⽉間の⼊院を経験しました。このコラムでは、まず数回にわたりその経験を綴ろうと思います。
幼い頃からやや⾼めの⾝⻑と細⻑いスタイルには恵まれて、中学⽣の時に貧⾎に悩まされた時期はありましたが、そのおかげで健康を意識するようになり、⾷事制限なし・怪我なしですくすくと育ちました。なので太りたくないとは思っても、痩せたいと思ったことはありませんでした。
⾷べることも好きだし、摂⾷障害とは無縁…と思っていました。
しかし、無事に⼤学を卒業し、ダンスをやっていくぞ!という時、少しずつ変わっていきました。
カンパニーに所属して初めての公演のリハーサルをしている時、⾐装を着る⾃分の姿を⾒て、「ぽやっとしてる…もう少し筋⾁をつけたい」と思いました。どうしたら、筋⾁をつけられるか、⾝体を使えるか、感覚が敏感でいられるか、お腹の筋⾁を使えるか… そんなことばかり考えていて、⻑時間の稽古の時も、お昼はおにぎり1個・間⾷にナッツやプルーン・夜⾷べないみたいな⾷事を続けてしまいました。空腹状態のほうが踊りやすい!などど思いながら… この時は、まだ⾝体に今まで蓄積していたものが多かったので、公演は無事に終わり、⼤切な経験となりました。
それから、トドメを刺したのは2020年のパンデミックでした。このままの偏った⾷⽣活が続きます。⾏動⾯では、できていなかったことをできるようにするにはロックダウンの今しかない、何かやらなければ、トレーニングをしなければ…と⽇常⽣活に⽬を向けず、⽇々踊りだけでいいと思った⾏動をしていました。
朝からストレッチをして、効いているかわからない筋トレをして、Gagaをオンラインで受けて、バーレッスンをして、ランニングに⾏って、午後はクリエーションをして… これをほぼ休むことなく毎⽇繰り返しました。社会的にも、精神的にも閉じこもっていた時、余裕なんてなくなり、どんどん痩せていきました。
そのまま、⼼⾝ともに栄養を吸収できない ″神経性やせ症仕様のからだ″ になっていきました。(その時は気づいていません)
どんどん踊れなくなって、⾃分がわからなくて、焦っていました。それでも、どうにかなるだろうと動き続けることをやめませんでした。
元々ダンサーとしては筋⾁質ではない⾝体。
プロフェッショナルとは何か、ダンサーの⾝体とはどうあるべきかを考え、筋⾁を使ってしっかり踊れるようになりたくて、過ごしてきたはずなのに、気づけば間違った⼭を登っていました。むしろ、⾝体を壊し続けていました。そして2023年5⽉、⼼臓の動きまで鈍くなって、⼊院となりました。
何事も無縁だと思っていても、いつ、どうなるかわからないのが⼈⽣なのかなと思います。
「神経性やせ症」は⾃分の認知が歪むことで気づきにくく、また周りの⼈もどう声をかけたら良いかわからない など癖の強い病気です。私の経験したことが、誰かのヒントになって、防げたらいいなという思いで綴っていきたいと思います。
杉本音音
杉本音音先生プロフィール

1996年生まれ。東京都世田谷区出身。4歳より新体操とクラシックバレエ、15歳でコンテンポラリーダンスに出会う。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。新体操指導歴6年。
様々な振付家の作品に出演。ワークショップも行う。階段を振付として使用したダンス作品「6steps」プロジェクトメンバー。(コンセプト・発起人:木村玲奈)
その他、音楽・写真・テキスタイル・美術・映像など他分野とコラボレーションでの企画、振付、パフォーマンスを行う。身体を以って紡ぐ・思考することを目指して日々″今日のダンス″を探している。
【杉本音音先生オフィシャルサイト】
https://neonsugimoto.jimdofree.com/
杉本先生へのご質問、ご感想等はこちらよりどうぞ!
contact@ballet-japon.com

『踊れるからだをつくろう!』〜バレエと食・身体を考えるフォーラム〜
杉本先生が直接お話してくださるイベントが8月13日に開催されます。
アーカイブでの配信もございますので、ぜひお気軽にご参加ください♪
詳細は下記アドレスよりご覧ください。
https://safedance.jp/ws/forum_2025_78/
摂食障害についてもっと知りたい、ご自身をチェックしたい方はSDAメディカルチーム作成の下記ページをぜひご覧ください。


