若さとは、まだ言葉にならない想いのかたまり。
まだ何者でもないというのは、ある意味気が楽なことかも知れません。
けれど、自分を表すことのできない霧の中にいる最中はとても苦しいもの。
特にアーティストを目指す者にとって、何者でもない自分というは不安でしかない存在かも知れません。
大人から見れば若いとはそれだけで可能性のかたまりに見えますし、まだ何にでもなれて、何度でもやり直せる存在です。
しかし若いとは、当事者にとってはそれだけで苦しい存在でもあると思います。
そんな不確かな若さにこそ、私たちは「信じて、見守る」という周囲のまなざしが必要だと思っています。
「頑張れ」「期待している」
それはきっと、善意から生まれた言葉です。
その言葉によって勇気づけられ、不安な中でもまた一歩踏み出すことができる。
けれど時としてその響きが、知らず知らずのうちにプレッシャーとなり、若い人たちの心を締めつけてしまうことがあります。
「ちゃんと結果を出さなくちゃ」「何かにならなくちゃ」
そうして、自分の輪郭さえ定まらないまま、焦りや不安に駆られてしまうこともあるかもしれません。
でも、人生のはじまりにある人たちにとって、「今、何者かであること」よりも、「今、何を感じているか」の方がずっと大切なことだと思います。
自分のペースで歩きながら、自分だけのリズムで世界を感じているその時間を、どうか大切にしてほしい。
そのために必要なのは、正解を教えてくれる大人ではなく、「あなたが今そこにいること」を、そっと受け止めてくれる存在なのかもしれません。
「今はまだわからなくてもいい」
「何かになる途中にいるあなたをちゃんと見てるよ」
そんなふうに、結果ではなく“過程”を見つめるまなざしを、私たちは大切にしたいと思っています。
バレエという芸術に向き合うなかで、若い人たちは数えきれない選択と葛藤に直面します。
誰かと比べて落ち込んだり、自分の才能に自信をなくしたり。
誰のせいでもない環境や自身の生まれ持ったものに嫉妬したり、されたり、振り回されたり。
特にクラシックバレエは、みんなの中になんとなく理想や正解があるからこそ、余計に自分を信じることの難しい世界でもあります。
それでも、その過程で感じたことや考えたこと、嬉しかったことも苦しかったことも、やがて自分だけのオリジナルの物語になります。
その一人一人の物語にこそ、唯一無二の価値が生まれること。
それは誰かと比べるものではなく、自分にもしっかりとした感性と、そこから生まれるオリジナルのストーリーが確かに存在するという事実。
私たちバレエジャポンは、彼女、彼らの「まだ言葉にならないその想い」を伝える場所でありたいと願っています。
すぐに形にはならなくてもいい。
うまく言葉にできなくてもいい。
そのままの今をまっすぐに届けていくこと。それが、私たちのメディアとしての役割だと信じています。
挑戦の裏にある不安や、前に進めない日々のことも、すべてが「あなたらしさ」になる。
その過程にこそ、応援の気持ちを届けたい。
そんな思いで、これからも若い人たちの声に耳を澄ませていきたいと思っています。
未来はまだ見えなくても、今を生きるその姿が、すでに尊くかけがえのないものだから。
バレエジャポンは、その歩みに寄り添い、光をあてていきます。
バレエジャポン