観劇レポート
紅茶とミルクの間のようなお時間を過ごさせていただきました。
以前、バレエジャポンにてインタビューさせていただいた、ダンス劇作家の熊谷拓明さんの公演、『in / wakehedate』にお伺いしました。
「代田橋にあるCHUBBYという場所にいらしたあなたが、飲み物片手にスッとソファーやベンチに座る頃。4人のよく踊り、よく喋る身体が現れるでしょう。」
と、熊谷さん自身が「毎日の日課なんです」と言って直接お渡しくださったプログラムに書かれている通り、区切りのないような空気、空間の中、終始、人間って可愛らしいなと思えたお時間でした。
最初は普通に見ていた4人のダンサーが、最後には歩き方も足音も輪郭も、すべてが愛おしく感じられるような温度感のある作品でした。
人が丁寧に扱われるのを見ると、心地よくなれます。人の重さが心地よく感じられるようなコンタクトワーク。重さって時に安心できるものなのかもしれない、と思えました。
作品全体も、ほっこりとした温度で、たまにシュールで可愛くて、気づけば笑っていたように思います。
「私も、そのままでいいんだな」と思えました。
もう少し可愛らしく生きてもいいのかな?と思ったり、可愛らしく生きるってなんだ?と考えたり、新たな問いにも出会えました。
そして、「心地良い」という言葉の意味を深く考えさせていただくきっかけにもなりました。
白と黒、熱湯と冷水、液体と個体、明るい暗い、好きと嫌い、嘘と真実、生と死。
私にとっては、この「間」が心地よいのかもしれません。同じものであって違うもの、認識しようとしてもきれない膜があるもの。
心地よさの正体は何なのでしょう?
自由?余白?意味のある自由?意味のある余白? それとも意味のない自由なのか、意味のある余白なのか……
紅茶とミルクの間……
いや、これは単にミルクティーが好きなだけかもですね。
そんなことが頭に漂いつつ、最後には、4人のダンサーに対する印象が大きく変わりました。
初めて会った方々なのに、明後日も会う気がするし、3週間後もどこかですれ違いそうな気がする。単純に考えると、私の目の前で踊って言葉を口にしていただけなのに、勝手に親しくなったような感覚でした。
心がほぐれると、体もほぐれる。
心と体がほぐれると、見える景色もほぐれる。
そんなことを帰り道に考えながら、また紅茶とミルクの間を揺れる。
まろやかで素敵なお時間を過ごさせていただきました。
紅茶とミルクの間……
……いや、やっぱりただミルクティーが好きなだけかもしれませんが、
ミルクティー好きなんです、
好きな「間」、好きな時間でした。
文:大海遊楽
【大海 遊楽 プロフィール】
6歳よりバレエを始める。
2016年14歳 Hearts&MindsBalletConcursにて、ロシア国立ボリショイバレエ学校サマースカラシップを受賞。サマースクールにて年間留学オーディションに合格し、翌年より同校に留学。
バレエ安全指導者資格ベーシックコース、プロフェッショナルコース修了。
バレエ安全指導者資格認定バレエ姿勢ベーシックインストラクター。
バレエジャポン専属アートライター
「in / wakehedate」
1.29(wed)
20:00
30(thu)
17:00 / 20:00
31(fri)
18:30 / 21:30
2.1(sat)
17:00 / 20:00
2(sun)
16:00 / 19:00
@CHUBBY
〒156-0041 東京都世田谷区大原2丁目27−9
京王線代田橋駅下車.徒歩3分
https://www.odokuma.com/in-wakehedate
コメント