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IwakiBalletCompany芸術監督井脇幸江さん
IwakiBalletCompany芸術監督井脇幸江さんインタビュー
神戸> まず、はじめに長く在籍されていた東京バレエ団を退団された後、ご自身で新しいバレエ団を創設されたということですが、その時のお気持ちや目標、ご自身の中でどのように気持ちが動いたのかお聞きしたいです。
井脇> そうですね…、東京バレエ団を退団した時は、まさかその年にバレエ団を作ることになるとは思ってもいませんでした。
東京バレエ団との関わりは、8才から40年ちかくだったので、通わない日が来ることが想像つきませんでした。
神戸> 当たり前の日常がなくなるって不安になりますよね。
井脇> でも実際に退団した日、駅に向かう道を歩きながら感じたのは「爽快感」でした。
3月末日でしたが、お天気がすごく良く暖かくて、とにかく気持ちが良かったのをはっきりと覚えています。
やっぱり長くいると凄く辛い想いもあったんでしょうね。
神戸> そうですよね、色々。
井脇> 退団後の不安はもちろんありましたが、なんでも有り!の未来が、楽しみでもありました。
私は元来、人の前に出るよりも裏から支えたい性分なので、生徒や後輩たちに自分の経験を伝えていく仕事がしたいと思っていました。
それならば、私の持っている全てを伝えたいと考え、古典作品での公演を打ちたいと思うようになりました。
でも自分一人では団員を抱えられないし、毎日レッスンもしてあげられない…。
そこで、公演ごとにダンサーをオーディションで募り、数ヶ月かけることで高いレベルの舞台を創れるのではないか?と考えたのです。
舞台を創ると決まったら、何の迷いもなく『ジゼル』が浮かびました。
それは、私が一番多く踊った作品でしたし、ありとあらゆる世界の一流ダンサーたちと共演することで、彼らの解釈や演技を客観的に見ることによって、自分なりのジゼル像やアルブレヒト像なども出来上がってきていました。
だから時には「うーん、それだと辻褄が合わないな」とか、バレエを見慣れている人だけのルールがあったら、伝わりにくいだろうな…などと考えるようにもなっていました。
ヒラリオンの描き方も、主演者のためには悪人っぽいほうが良いのかもしれないけど、横恋慕の嫌な人ではないはずだな、と感じていたり。
神戸> 悪者じゃないと言うか
井脇> そうそう!盗人たけだけしく、人の家の窓を開けて剣を見つけ出すのは、私としては違和感がありました。
バチルド姫も、高飛車でツンケンしているのではなく、同じ結婚を控えた者同士だからこそ、ジゼルと一瞬心が打ち解けてネックレスをプレゼントしたくなったのではないか?とか…。
ミルタも、ただ怖い表情をしたまま「No!」というのがお仕事みたいになりがちですが、そんなはずはないと思いました。
私は役を頂いた時はそれぞれの役がその動きをするにはどうやったら辻褄が合うかというとっても根本的なことから研究していたので、一つひとつの役に対して私だったらこの役はこう創るなとか、私がその役を踊るのならこう踊るなとか、女性の役だけではなくて男性の役も含め、思うところがたくさんあったんですよね。
神戸> なるほど、そうなんですね。
井脇> だから実は頭の中にはすでに私なりの『ジゼル』があったんですよね。
変な言い方ですが、紙の上でも作品が創れるくらいに。
神戸> すごいですね!
井脇> そう、だから上演が決まってからはスーッと出来上がったんですよ。
- 1:IwakiBalletCompany芸術監督井脇幸江さんインタビュー
- 2:ジゼル、そしてミルタという役について
- 3:芸術監督としての思い、そしてIwakiBalletCompanyの誕生