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パリ・オペラ座バレエ エトワール イザベル・シアラヴォラさん

世界最高峰のバレエ団、パリ・オペラ座バレエ。狭き門をくぐって入団したダンサーの中でも、さらにほんの一握りだけが任命される「エトワール」は、バレエを習うすべての人の憧れです。そのエトワールの一人で、2013年5~6月の来日公演『天井桟敷の人々』でも素晴らしい踊りを見せてくれたイザベル・シアラヴォラさんが出演するレッスンDVD、『パリ・オペラ座エトワールのマスタークラス』が、同5月に発売になりました。美しいポワントワークを支える、イザベルさんのコンディショニング方法に迫ります。
――DVDを拝見しました。あそこまで美しく踊ることは難しいですが、いろいろとお話をうかがうことで、少しでも参考にしたいと思います。
やめてくださいよ、難しいだなんて(笑)。私は、意志と夢を持って努力すれば、誰でも上達するものだと思っているんです。才能の形は一人ひとり違うけれど、それぞれが自分の個性や長所を生かした踊りをすればいいんです。私自身、うお座ということもあってか(笑)、ときどき自信を失ってしまうことがあるけれど、やっぱり自分自身を受け入れることが一番大事ですよね。
――ありがとうございます。DVDでは、レッスン風景はもちろん、イザベルさんの人柄が表れたインタビュー映像も素敵でした。
私は今まで、日本での知名度がそんなには高くなかったと思うんです。『天井桟敷の人々』は私のために振付けられた作品だったから、こうして日本でも踊ることができたわけですが、今回の公演がきっかけで初めて私に興味を持ってくださった方もいるんじゃないかしら。DVDには、舞台ではお見せできなかった生徒としての私、素の私が出ているので、私のことをより深く知っていただく機会になれば、と思っています。
――では早速、普段のレッスンで特に気を付けていることを教えていただけますか?
年齢によっても違ってくると思いますが、自分の体を熟知している40歳の今は、ウォームアップを省略せず、段階を追って体を起こしていくことを大切にしています。筋肉が求めていることに従うように、表面だけではなく深いところから動かして、徐々にエネルギーを出していくような感じ。特に舞台の翌日は、体にいろいろな悪いものが溜まっているのを感じるので(笑)、マッサージをするような感覚でじっくりとバー・レッスンに取り組んでいます。いきなり激しい動きをするようなことは決してないですね。
©Maria-Helena Buckley
――ウォームアップにはどれくらいの時間をかけているのですか?
ケースバイケースで、筋肉や精神の疲労度を考慮しながら決めています。本番前などで疲れている時ほど、早く劇場に入って呼吸を整えることからスタートすることが多いですね。まずは自分の楽屋で、ゴムやローラーを使って簡単なストレッチをしてから、スタジオに向かいます。気分的にのらなくても、バーにつかまって音楽を感じているうちに、体がバイブレーションを起こすように自然と動いてくる。そうしていると、辛いこともいつの間にか忘れているんですよ。音楽は私にとって、本当に大切なものなんです。
©Maria-Helena Buckley
――レッスンの後は、いつもどう過ごされているのですか?
レッスンが朝の1時間半なんですが、大体その後4~6時間くらいリハーサルをして、本番がある時はそれから舞台です。私のこだわりは、リハーサルも舞台も、終わったらさっさと帰ること!(笑)オペラ座から徒歩15分くらいのところに住んでいるので、歩いて帰ってお風呂や食事などを楽しんでいます。歩くこともまた、体にいいんですよね。
リハーサルと本番の間にちょっとだけ帰って、仮眠をとることもあります。本番前の過ごし方は作品次第で、例えばグラン・ジュテが続くような激しい作品なら、血行をよくする靴下をはいたりストレッチテープを貼ったりして心臓のペースを上げておく必要があるけれど、静かな作品なら、気持ちも鎮めて臨まないといけませんから。
――日常生活の中で、体のために気を付けていることがあれば教えてください。
体を冷やさないことですね。体全体が温まるのでよく自転車に乗りますし、レッスンでも、あえて暖かいウェアを着て意図的に汗をかくようにしています。DVDでも、黒いパンツをはいていますよね。
食事については、もともとお肉をほとんど食べないのでカロリーを気にすることはあまりないんですが、なるべく新鮮な、オーガニックな食材を摂るようにはしています。ちょっと高いけれど、 新鮮なほうが美味しいですしね(笑)。それと、ドライナッツやドライフルーツをよく食べますね。ナッツには脂肪酸やビタミンが豊富に含まれているので、皆さんにもオススメですよ。
――最後に、『バレエジャポン』読者にメッセージをお願いします!
今回日本に来られたことを、心から光栄に思っています。日本の皆さんがどれだけバレエを、そしてオペラ座のダンサーを愛してくださっているかが伝わってきて、舞台の上でベストを尽くしたい、皆さんと感動を分かち合いたい、と改めて思いながら踊ることができました。それに日本人は、ダンサーもみんな礼儀正しく熱心で素晴らしい方ばかり。これからも、情熱を持って踊り続けてほしいですね。

イザベル・シアラヴォラさん
フランス・コルシカ島出身。パリ国立高等学校・舞踊学校、パリ・オペラ座バレエ学校を経て、1990年パリ・オペラ座バレエに入団。2009年に『オネーギン』のタチヤーナ役を踊ってエトワールに任命される。2014年2月の引退を控え、最近は後進の指導やダンスウェアのデザインなど、舞台以外にも活躍の場を増やしている。