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『パリ・オペラ座エトワールのマスタークラス』
足の裏にピッタリと吸い付き、
まるで身体の一部のような
ポアントワークは圧巻!

加藤千尋
(ダンサー・バレエ教師)

トウシューズというのはバレエを習い始めたばかりの少女達にはもちろん、ある程度経験を積んだダンサー、そしてプロのバレリーナ達にとっても夢の靴です。
トウシューズを履く事によって、自分の足のラインをより美しく見せる事ができ、動きの可能性が増えるのです。
その為には足の筋力を正しくつけ、身体を引き上げて踊る力が必要です。
正しく履く事が出来ないとケガにつながったり、ボックス(トウシューズの先の硬くなっている部分)に足を入れて履くという構造上、長時間の使用はプロのダンサー達でさえも辛いものがあります。
ですが、そういう辛い部分と引き替えにラインの美しさ、そして動きの可能性を手に入れるのです。
トウシューズを自分の足の一部の様に見せ、使うには日々の訓練が欠かせないのです。
「パリ・オペラ座エトワールのマスタークラス」
このレッスンDVDは、オペラ座のエトワールであるイザベル・シアラヴォラのデモンストレーションによる、ポアントでのバーレッスン、センターレッスンを収めたものです。

オペラ座のカンパニーティーチャーでもあり、世界中のトップダンサー達が信頼を寄せるアンドレイ・クレムの指導による、的確なアドバイスも実にわかりやすいです。
さて、レッスンは両手バーで行うウォームアップから始まり、冒頭からいきなりイザベルの素晴らしい足のラインを観る事が出来ます。
トウシューズの裏側、ソールの部分が彼女の足の裏にピッタリと吸い付き、まるで身体の一部のようなポアントワークは圧巻です。
彼女の前タンジュと後ろタンジュはとてもクロスされていますが、イザベルの腰の位置(骨盤の位置)は左右水平のままです。
これがとても大切なポイントです。
私が生徒さんに指導する際には、前タンジュは自分のおへその前、後ろタンジュは頭の真後ろと伝えていますが、これは身体の軸になる腰の位置を水平に保ったまま、アンディオールを意識して使える様にです。

イザベルのバーレッスンを観ているとアンディオールとクロスをよく意識しているのが解ります。
アンディオールとクロスと言えば、元パリ・オペラ座のエトワールで、ジャン・ギヨーム・バール氏がゲストティーチャーとして日本にいらしていた時に、私が所属していたクラスでもとてもよく注意して下さった事でした。
そして美しい足のラインの他にも見逃してはいけないのが、ポールドブラと上体の動きです。
イザベルは足の動きだけでなく、上体の動きにもとてもよく気を付けているのがわかります。
足の動きにばかり気をとられてしまうとつい、ポールドブラや上体の動きに注意がいかなくなってしまいがちですが、上体の動きというのは常に足の動きと連動しています。
これをバール氏はオペラ座スタイルだとおっしゃっていたのが、私にはとても印象に残っています。
世界中には素晴らしいバレエカンパニーがたくさんありますが、パリ・オペラ座のダンサーの踊りには独特のエレガントさがあります。

さてバーレッスンの後半では、アンドレイ氏も褒めていましたが、このDVDのもう一つの素晴らしいポイントはピアノです。
レッスン曲を弾いているのはオペラ座専属のピアニストであり、オペラ座にも多くのファンを持つという、シルヴァン・デュラン氏。
彼の弾くピアノは、それぞれのエクササイズに実にピッタリの物を弾いてくれています。
音楽というのはダンスと密接な関係にあり、私もそうでしたがそのパにあったリズム、メロディーなど「あ!この曲良いな」と思うものがくると、気持ち良く踊れるものです。
バレエダンサーは音楽に助けられて踊っている部分が多いにあるのです。
そして今回のレッスンDVD内の音楽はすべて、シルヴァン・デュラン氏による書き下ろしだという事です。

バーレッスン後はいよいよセンターレッスンです。
アンドレイ氏もDVD内で言っていますが、センターはバーレッスンの延長です。
バーレッスンで意識して目覚めさせた筋肉をのびのびと使い動いていきます。
センターのアンシェヌマンもよく考えられた素晴らしい訓練になるものばかりで、何よりイザベルの美しい動きと音楽性に目を奪われます。
後半にはチュチュもつけて動いてくれるので、まるで彼女の舞台、一つの作品を観ているかの様です。
それから、忘れてはいけないのが特典映像になっているイザベル達のインタビューです。
彼女の少しお茶目な部分も観られて、とても楽しいです。
「パリ・オペラ座エトワールのマスタークラス」
とても素晴らしいDVDに出会えました。
作品情報
【作品タイトル】
『イザベル・シアラヴォラ&アンドレイ・クレム
パリ・オペラ座エトワールのマスタークラス
バー&センター&ポアント・レッスン』
【作品概要】
鮮やかな足さばきに柔らかな腕の運び…
パリ・オペラ座のエレガンスを形成する日々のレッスンをオペラ座エトワールとカリスマバレエ教師がすべて公開! オペラ座専属のベテランピアニストによる演奏に合わせ、ガルニエ宮のスタジオで収録。 バレエを愛するすべての人に向けた、この上なく贅沢なレッスンDVDです。
【指導】
アンドレイ・クレム/Andrey Klemm
パリ・オペラ座バレエ教師 ボリショイ・バレエ学校卒業後、85 年からモスクワ・クラシカル・バレエ団でソリストを務める。 2001 年よりベルリン国立バレエ団でバレエ教師となり、07 年からはパリ・オペラ座バレエでプ ロフェッショナル・クラスを担当。ボリショイ・バレエ、シュツットガルト・バレエ団、東京バレエ団、 ワガノワ・バレエ学校などでもゲスト・ティーチャーを勤める。
【モデル】
イザベル・シアラヴォラ/Isabelle Ciaravola
パリ・オペラ座バレエ エトワール フランス・コルシカ島出身。パリ・オペラ座バレエ学校を経て、90 年同バレエ団入団。 09 年「オネーギン」を踊ってエトワールに任命される。
【音楽】
シルヴァン・デュラン/Sylvain Durand
パリ・オペラ座 専属ピアニスト
1963年パリ生まれ。ピアニスト・作曲家・即興演奏家。パリ国立高等音楽・舞踊学校を首席で卒業後、歌手フィリップ・シャテル、音楽家ジャン・ミシェル・ジャールらと共に活躍。
平行してバレエ音楽の作曲を手がけ、ローラン・プティ振付「マ・パブロワ」に楽曲を提供した。長年にわたりパリ・オペラ座バレエのレッスン・ピアニストを務めており、ダンサーに多くのファンを持つ。次世代ピアニストの育成も積極的に行なっている。
世界のトップダンサーたちも絶賛!
毎日受けたくなるクラスです。
SHOKO(ベルリン国立バレエ・Kバレエ プリンシパル)
アンドレイのクラスは、体に無理のない“オーガニック”なレッスン。とても気に入っています。
マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
アンドレイは才能豊かな教師。彼のクラスの大ファンです。
オーレリ・デュポン(パリ・オペラ座バレエ エトワール)
DVD情報
2013年 フランス制作
2013.5.22 発売 約112分 日本語吹替え(ON/OFF 可)
【収録内容】
レッスン(72分):バーレッスン/センターレッスン/ポアント・レッスン
特典映像インタビュー(40分):シアラヴォラ/クレム/ブリジット・ルフェーブル(パリ・オペラ座バレエ芸術監督)
※レッスンはすべてピアノ伴奏によるものです
※すべてのレッスンはトウシューズを履いて行われ、ポアント・ワークを重視した内容となっています
【DVD】
¥4,800(税抜) /片面一層/カラー/16:9
発売元:日本コロムビア
今回のレビュアー/加藤千尋プロフィール
4歳で栗林キミ子バレエスタジオにてバレエを始める。この時バレエが本当に好きになり、将来の夢はバレリーナになる事だった。その後、小学4年生の時に長野県に引越し、栗林先生の勧めだった長野バレエ団に片道2時間半かけて通う。その後中学卒業後に、また東京に戻り早川恵美子、博子に師事。
平成12年NBA全国バレエコンクール 中学生の部 第4位の1
全国舞踊コンクール ジュニアの部 入選
そして、チャイコフスキー記念東京バレエ学校に入学。友田優子、弘子、佐野志織に師事。
第1回スクールパフォーマンスでキューピットを、第2回スクールパフォーマンスではオーロラ姫を踊った。
平成19年 チャイコフスキー記念東京バレエ団に入団。
古典や現代作品など主要な演目に参加し、国内ツアー、ヨーロッパツアーにも参加。
平成25年 同団を退団し、現在は後進の指導にあたっている。
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