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英国ロイヤル・バレエ団「くるみ割り人形」
豪華なキャストと
感動のストーリーで
バレエの魔法に引き込まれる!

加藤千尋
(ダンサー・バレエ教師)
毎年この時期になると街中で1番よく耳にする機会が増えるクラシック音楽と言えば、今回ご紹介するこのくるみ割り人形ではないでしょうか?チャイコフスキーの3大バレエの一つであるこの作品は、毎年クリスマスの近づく12月のこの時期、世界中のバレエ団で上演され大人だけでなく、子供達も楽しみに劇場に足を運びます。英国ロイヤル・バレエ団「くるみ割り人形」こちらは2001年のコヴェントガーデンでの舞台を収録したもので、以前にもご紹介した事のある鑑賞ナビ付きです!

さて、今回のくるみの最大の魅力はその豪華なキャストです。物語の主人公であるクララには、前回のDVDレビューでご紹介した英国ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女」でもオーロラ姫を演じていたアリーナ・コジョカルが、タイトルロールであるくるみ割り人形には、イヴァン・プトロフ、そしてクララの憧れの対象として描かれる金平糖の精には、日本が世界に誇るバレリーナの吉田都が演じています。そして、それらの素晴らしいダンサー達をも圧倒する程の存在感を放つのが、ドロッセルマイヤーを演じるアンソニー・ダウエル。アンソニー・ダウエルと言えば、英国ロイヤル・バレエ団の象徴的な存在として今もずっと語られている程の本当に素晴らしいダンサーですが、ダンサーとしての現役を引退後もその卓越した演技力と存在感で数々の重要なキャラクターを演じています。私がまだ10代の時に、幸運にもはじめてプロとして立った「眠れる森の美女」の舞台で、彼の演じるカラボスを目の当たりにした時の衝撃は今も忘れられません。その怪しい魅力を秘めた目の力、カラボスという悪役でありながら気品の溢れる姿に、舞台上にいながらその存在に引き込まれました。今回はそのダウエルの演じる、ドロッセルマイヤーがストーリーテラーとなり、物語の要所要所でスパイスとなり舞台を引き締めています。
そしてロイヤルで上演されているピーター・ライト版の特徴は、他のバレエ団ではくるみ割り人形で起こる一晩の出来事は、少女クララの夢だったとされる事が多い中、ホフマンの原作を活かしてクララの夢ではなく、本当に現実に起こった事だったとしている事です。それによって最後のシーンは本当に感動的なものになっています。
幕開きからドロッセルマイヤーのかける魔法の世界にすぐに引き込まれ、更に鑑賞ナビによるマイムの解説により、より深くくるみ割り人形の世界観を知る事が出来ます。1幕のシュタールバウム家のクリスマスパーティーのシーンは、コジョカルの可憐な魅力溢れるクララや、これもライト版の特徴ですがクリスマスの天使も登場し、更には子供達も本当にロイヤル・バレエスクールの生徒達が演じている為、賑やかでとても楽しいシーンになっています。真夜中の居間で起きる人形とネズミ達の戦争シーンのドキドキ感、そして美しいセットの転換シーンも魅力の一つです。美しい雪のシーンの後、クララ達はお菓子の国に辿り着きます。ここでの見所はやはり、吉田都の金平糖とジョナサン・コープの王子によるグラン・パ・ド・ドゥです。

私がはじめて吉田都さんの踊りを観たのは、新国立劇場のこけら落としの時の「眠れる森の美女」だったのですが、彼女が1幕のオーロラの登場シーンで舞台上に現れた時、客席に一瞬春風が吹いた様な、そんな気がしたのを覚えています。小柄で可憐な雰囲気を持ちながら、芯の通った踊り…。なんと形容するのが一番伝わるのか本当に悩んでしまうのですが、とにかく全くムダ足を踏まないのです。バレエを踊った事のある方なら何となくわかって頂けるかもしれませんが、パとパを繋ぐ間の動きに全く無駄がない。一歩を出したらすぐ次のパに繋がる、この事は当たり前の様ですが本当に難しい事なのです。私が今までたくさんのダンサーを見てきた中で、それを一番強く感じたのが吉田都さんです。
数々の楽しい踊りが演じられ、いよいよ金平糖の精と王子によるパドドゥでは、チャイコフスキーの美しい音楽と、クラシックバレエの王道とも言える優雅なパの数々が散りばめられています。ジョナサン・コープの絵に描いた様な王子も素敵です。お菓子の国のコーダのシーンから、ドロッセルマイヤーのかけた魔法が解ける所は、私達観ている側も少しさみしい気持ちになりますが、ピーター・ライト版は最後が素敵です。全編を通して、美しいセットや衣装、英国ロイヤル・バレエ団の素晴らしいダンサー達に引き込まれるくるみ割り人形。是非、ご家族や大切な方と一緒にバレエの魔法を感じてみてはいかがでしょうか。
作品情報
【作品タイトル】
英国ロイヤル・バレエ団「くるみ割り人形」
【作品概要】
映像に合わせて見ることができる鑑賞ナビが分かりやすい!
バレエを観るのが初めての方でも理解できる!楽しめる!鑑賞ナビつきDVD。
チャイコフスキー3大バレエのうち「くるみ割り人形」の登場人物やストーリー、
マイムの意味、テクニックなど、鑑賞のポイントを字幕で解説。
日本が誇るバレリーナ、吉田都が金平糖の精役で出演しています。
【出演】
クララ:アリーナ・コジョカル
ドロッセルマイヤー:アンソニー・ダウエル
金平糖の精:吉田都
王子:ジョナサン・コープ
ハンス=ペーター(くるみ割り人形):イヴァン・プトロフ
ハレルキン:ヒューバート・エッソー
コロンビーヌ:ジェーン・バーン
兵隊:リカルド・セルヴェラ
ヴィヴァンディエール:ラウラ・モレラ
薔薇の精:ゼナイダ・ヤノウスキー 他
英国ロイヤル・バレエ団
原振付:レフ・イワーノフ、エンリコ・チェケッティ
振付・演出:ピーター・ライト
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
美術:ジュリア・トレヴェリアン・オーマン
照明:マーク・ヘンダーソン
指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ
演奏:コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
【吉田 都(金平糖の精)】
1983年ローザンヌ国際バレエコンクールに入賞後ロイヤル・バレエ学校に留学。バーミンガム・ロイヤル・バレエを経て、95年に英国ロイヤル・バレエ団に移籍、プリンシパルとして活躍。軽やかさや気品、繊細な音楽性を持ち味とし、古典バレエの正統派のヒロインを踊って比類がない。2010年4月、英国ロイヤル・バレエ団を退団。今後は日本に活動拠点を移すため、日本のファンを喜ばせた。
鑑賞ナビでさらに理解を深める!楽しめる!
【映像に合わせて字幕で解説】
バレエの見方を分かりやすくナビゲートします。
・登場人物
・ストーリー
・マイムの意味
・バレエのテクニック
*字幕はON/OFFできるので、慣れてきたら字幕なしで楽しめます。
【解説書付き】
お子さまでも楽しめる、写真を豊富に使った
やさしく読みやすいもので、内容も充実!
・登場人物紹介
・ストーリー
・見どころ
・バレエ用語解説
・ダンサープロフィール など
【DVD】
¥4,800(税抜)/片面2層/日本語字幕付/本編107分/16:9/リニアPCM
発売元:日本コロムビア
今回のレビュアー/加藤千尋プロフィール
4歳で栗林キミ子バレエスタジオにてバレエを始める。この時バレエが本当に好きになり、将来の夢はバレリーナになる事だった。その後、小学4年生の時に長野県に引越し、栗林先生の勧めだった長野バレエ団に片道2時間半かけて通う。その後中学卒業後に、また東京に戻り早川恵美子、博子に師事。
平成12年NBA全国バレエコンクール 中学生の部 第4位の1
全国舞踊コンクール ジュニアの部 入選
そして、チャイコフスキー記念東京バレエ学校に入学。友田優子、弘子、佐野志織に師事。
第1回スクールパフォーマンスでキューピットを、第2回スクールパフォーマンスではオーロラ姫を踊った。
平成19年 チャイコフスキー記念東京バレエ団に入団。
古典や現代作品など主要な演目に参加し、国内ツアー、ヨーロッパツアーにも参加。
平成25年 同団を退団し、現在は後進の指導にあたっている。
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