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オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に
自分の身体と
向き合い葛藤する
1人の女性のドキュメンタリー

加藤千尋
(ダンサー・バレエ教師)
パリ・オペラ座バレエ団、フランスの国立のバレエ団で世界的にも有名なこのカンパニーは、徹底的な階級制度でダンサーは管理されそのピラミッドの頂点に君臨するのが、エトワール(フランス語で星の意味)です。
今回ご紹介するのは、そのエトワールであるオーレリ・デュポンのドキュメンタリーです。 パリ・オペラ座に入団するダンサーの多くが卒業している、パリ・オペラ座バレエ学校。オーレリは、鬼の名校長(笑)と名高かったクロード・ベッシーの元、学びました。
本編では厳しいレッスンを懸命に受けるまだ幼さの残るオーレリの姿も観る事が出来ます。 バレエ学校の生徒達、皆の目標はただ一つ、オペラ座のエトワールになる事です。

さて、本編ではオーレリとずっとパートナーを組んでいる、マニュエル・ルグリとの様々な作品のリハーサル風景が楽しめます。
椿姫、白鳥の湖、ル・パルク… そこで見せるオーレリの姿は、私が普段の舞台上で観ていた、強く美しいクールビューティーなエトワールの姿ではなく、テクニックへの不安、リフトへの恐怖心、自分の身体と向き合い葛藤する1人の女性でした。
長年の信頼関係で結ばれている、パートナーのルグリやコーチからの励ましで折れそうな心をなんとか立て直し、自分を奮い立たせようとする姿は思わず頑張って!と応援したくなるものでした。

もちろん、シリアスなリハーサルばかりではなくたまに冗談が飛び交ったり笑いも絶えず、オペラ座のエトワール達の飾らない普段の姿も観られてとても楽しいです。(特にル・パルクのリハーサルは最高です。笑)
このリハーサル風景を観た後に特典映像を観ると、あ、あの時ののシーンだなとかリハーサル時の光景が頭に浮かび、更に作品を楽しむ事が出来ると思います。
DVD内では、オーレリのプライベートな姿にもとても密着していてオペラ座に向かう姿、帰りの姿、楽屋での様子、そして彼女の妊娠中の姿もありました。 無事男の子を出産した彼女は瞬く間に体型を戻し、舞台にカムバックしました。
私自身も、現役時代に妊娠、出産を経験した為、オーレリのカムバック時のステージへの不安というものが手に取る様にわかり、ましてやエトワールである彼女のプレッシャーは計り知る事が出来ません。
だけど、終演後の彼女の笑顔は女性としてもダンサーとしても、とても幸せに満ち溢れたものに私には見えました。楽屋で早く帰って息子の顔が観たいと微笑む彼女の顔がとても印象に残っています。
作品情報
【作品タイトル】
オーレリ・デュポン 輝ける一瞬に
【作品概要】
オペラ座の麗しきトップ・エトワール、オーレリ・デュポンを追ったドキュメンタリー作品が遂に完成!
3年にわたる撮影期間、マルチカメラを使用した美しく斬新なカメラワーク、オペラ座のアーカイヴを含む豊富な舞台映像で現在のデュポンが放つ煌めきに酔いしれる、至福の78分。
【収録内容】
◇本編(58分)
・インタビュー
・舞台映像 ※本作品のための撮りおろし(「ライモンダ」、「白鳥の湖」、「椿姫」、「ル・パルク」)
・リハーサル映像
・過去の映像
・オフの素顔(妊娠・出産、楽屋)
◇特典映像(20分)舞台映像
・「ル・パルク」(A.プレルジョカージュ振付)
・「椿姫」(J.ノイマイヤー振付)
発売元:日本コロムビア
今回のレビュアー/加藤千尋プロフィール
4歳で栗林キミ子バレエスタジオにてバレエを始める。この時バレエが本当に好きになり、将来の夢はバレリーナになる事だった。その後、小学4年生の時に長野県に引越し、栗林先生の勧めだった長野バレエ団に片道2時間半かけて通う。その後中学卒業後に、また東京に戻り早川恵美子、博子に師事。
平成12年NBA全国バレエコンクール 中学生の部 第4位の1
全国舞踊コンクール ジュニアの部 入選
そして、チャイコフスキー記念東京バレエ学校に入学。友田優子、弘子、佐野志織に師事。
第1回スクールパフォーマンスでキューピットを、第2回スクールパフォーマンスではオーロラ姫を踊った。
平成19年 チャイコフスキー記念東京バレエ団に入団。
古典や現代作品など主要な演目に参加し、国内ツアー、ヨーロッパツアーにも参加。
平成25年 同団を退団し、現在は後進の指導にあたっている。
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