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ウィーン国立歌劇場バレエ団専属ピアニスト 滝澤志野さん
バレエピアニストを選んだきっかけ

ピアニストとして日本での経験を詰み、2011年9月、ウィーン国立歌劇場バレエ団の専属ピアニストとして活動の場を海外に移した滝澤志野さん。バレエピアニストとしてご経験された日本と海外の違い、気になるダンサー達との交流やピアノにかける想いを皮切りに、ピアニストのお仕事についてたっぷりと伺いました。
ウィーン国立歌劇場のオーケストラピットの様子
ーーお仕事として、バレエピアニストを選んだきっかけは?
子供のころから舞台が好きで、小学校の頃から色々な舞台を見せてもらっていました。バレエに限らず、ミュージカル、宝塚、ちょっと大きくなってからはオペラ、歌舞伎も。とにかく舞台が好きだったんですね。
一方で、ピアノはずっと好きでやっていて、音大(桐朋学園芸術短期大学)に入って仕事を選ぶうえで、一人で弾くよりも誰かと一緒に演奏したい、アンサンブルが好きだし舞台のそばにいたい、と考えていました。
私が行っていた大学には演劇科があって、そこに毎週バレエの授業があったんですが、レッスンで弾くピアニストをピアノ科から選ぶことになって私が選ばれたんです。それがきっかけでレッスンを一年間続け、バレエピアニストとして生きていきたい、と思うようになりました。
──いわゆる演奏会で弾くピアニストとバレエピアニストには、どのような違いがあるのでしょうか?
バレエの場合はダンスが主体なので、その動作を覚えて、そこに沿って音を付けなければいけません。弾くタイミングやダンサーの飛ぶ時や回る時の筋肉の使い方などを計算して弾く必要があります。同時に、音楽を使ってダンサーをその世界に連れて行ってあげるということも大事な要素だと思います。
ダンスに精通していないと難しいお仕事ですね。
そうですね。だからもう最初は全然分からなくて。音大の卒業後に雇って頂いたバレエスタジオでは、本当に基礎から教えて頂いて、「分からないなら(バレエの)レッスンに出なさい」と言われ、大人向けの基礎クラスに出たことも。踊りながら身体で覚えていく作業はとても大変でした。
そこで数年経験を積んで自信がついた頃に、ずっと憧れていた新国立劇場にダメもとで電話したんです。「バレエ団でピアノを弾かせてください」と単刀直入に申し出たところ快く受け入れて頂き、履歴書を送ったら「来週弾きにきてください」と! 初めて弾かせて頂いた日は、奇しくも私の誕生日。憧れのダンサー達と一緒にピアノを弾いていることへの胸の高鳴り、感動は今でも忘れられません。そうして最初はエキストラで呼ばれるようになり、そのうちレギュラーにして頂いて、リハーサルも弾かせて頂けるようになり…。
ウィーン国立歌劇場のオーケストラピットにて、仲間とピアノを前にする滝澤志野さん。
──ウィーン国立歌劇場バレエ団に、専属ピアニストとして渡ることになったきっかけは?
バレエは西洋の芸術なので、海外での現場を知りたいと思うようになったんです。東京で海外の方と一緒に仕事をする機会が増えていたこともあり、研修か仕事かどちらか分からないけれど、とにかくどこかの劇場に受け入れてもらえたら…と思って、「ヨーロッパに行きたいんです」と、色んな方に相談しました。
そうしたら、何名かの方がヨーロッパの劇場を紹介してくださいました。ウィーン以外の劇場も見学させて頂けることになったのですが、私は中でもウィーンの国立歌劇場には思い入れがあって。その前の年に旅行で行った時に、劇場の中に入って心を奪われてしまい、もう「絶対ここ!」と思っていました。ここで音楽がしたいって。そんな想いを持ってウィーンにも見学に行ったのですが、そこでたまたま、その次のシーズンからピアニストに一人欠員が出ることを聞かされ、「ウィーンに来る気持ちはない?」と聞かれたんです。
運命的な出会いですね!
そうなんですよ。もう、貫かれたような感じでした。その場で「じゃあ、ちょっとピアノ聞かせて」と言われてピアノを弾いて、次の日はクラスで弾かせて頂いて。そして、日本に帰国してからずいぶん後になりましたが、あなたを採用したい、という連絡を頂いたんです。
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滝澤志野さんプロフィール
経歴
桐朋学園大学短大部ピアノ科卒業、専攻科終了。
堺ピアノコンクール金賞受賞。第一回21世紀ピアノコンクール第一位受賞。
ピティナピアノコンペティション全国大会入賞。
オペラ・バレエの伴奏に携わり、国内外の歌手、ダンサーとステージを共にする他、 多くのアーティストと共演。
新国立劇場バレエ団ピアニストを経て、2011年9月よりウィーン国立歌劇場バレエ団の専属ピアニストとして活躍中。