摂食障害の理解を深めよう

  • URLをコピーしました!

摂食障害の理解を深めよう
食事に不安や罪悪感を抱えているバレリーナの方へ

SNSで見かけた誰かと自分を比べて、

「あの人の方が痩せている、許せない、これじゃダメだ。」
「自分の方が痩せている、よかった。」

そこにしか自分の居場所がなくて、痩せているということにしがみついて安心している。

「病気なんじゃない?」
「痩せすぎじゃない?」

異常かもしれないのはうすうすわかってる。
でもせっかく見つけた私の安心できるもの。

なくしたくないし、認めたくない。
これがなくなったら耐えられない。

「太った?」
どうしてそんなひどいこと言うの?
あなたに私の何がわかるの?
もっと痩せなきゃ。もっともっと。

食事なんて誰かとできない。
ルールがあるから。
本当は一緒に食べたいのに、痩せることを優先してしまう。

これは一生続くの?
そんな不安はあるけれど、今は痩せていられるなら、
これでいい。

摂食障害はふとしたきっかけで発症します。

本人にも自覚がないまま、最初は普通のダイエットと変わらないかもしれません。
しかしもともとの本人の性格や背景、環境などが影響して摂食障害に移行してしまうことがあります。
きっかけを作った側もそんなつもりはなく、気づいていないことも多々あります。

しかし体重や体型、見た目に関わることはとてもセンシティブで相手にとっては心が壊れる原因にもなり得るということを、ぜひ知っておいてください。

少なくとも安易に体重や体型を否定するような言葉を口にしたり、標準体重を下回るような数値を上げて、あたかもそれがよいように見せるなど、特に影響力にある方には慎んでいただけたらと思います。

さまざまな情報が溢れる中、摂食障害という言葉に皆さんはどのような印象をお持ちでしょうか?

怖い病気というイメージを持たれる方もおられると思いますが、痩せすぎとどう違うの?どこまでいくと摂食障害なの?というようによく知らない部分があるという方も多いと思います。そしてこれが一番危険なことですが、摂食障害がファッションのように扱われ、それに憧れを抱く方も少なくないのです。

このページを通して摂食障害についての正しい知識を身につけ、どう予防や指導をしていけばいいのか、回復の過程で家族や周りの人たちが安心して当事者を支えていくためにどう関わっていけばよいのか、私たち一人ひとりがどうあればいいのかを考えていきましょう。

目次

摂食障害はどんな病気?

摂食障害は食行動(食べること)の異常と、それに伴う認知や情動の障害を主な症状とする疾患です。

「痩せたい」「食べたい」だけでなく、もっと深いところに問題があるために、食べることに困難が生じて正常な食事が長期間行えない状態になり、ボディイメージの歪みが見られたり、明らかな低体重・低栄養状態にも関わらず、本人はその重篤さを認識できない状態にあり、自己評価は体型・体重にとても依存しています。

痩せることにこだわって拒食する『神経性やせ症』、過食したら 嘔吐や下剤で排出する『神経性過食症』が代表的ですが、過食しても排出しない『過食性障害』もあります。これらの症状は重なって現れたり移行したりします。その他の精神疾患を合併することも多く、やせ症は栄養失調となり進行すると命に関わる深刻な病気です。摂食障害はいろいろな理由により症状が目に見えて深刻になるまでは気づかれにくいことも多く、その「サイン」を見逃さないようにすることが大切です。また治療には時間がかかり、ぶり返すことも多いため周りのサポートも大切な役割となってきます。

摂食障害の歴史と社会的環境

神経性やせ症は、1960年以降の痩身モデルブームなどの社会的背景に伴い増加し、その後いつでもどこでも食べ物が手に入りやすい環境下に過食症も増加してきました。現在も世界的に摂食障害は増加傾向にあり、日本でも体重や体型へのこだわりが強くならざるを得ない社会的な風潮や、社会・家庭環境におけるストレスによる心理的要因を背景に増加傾向にあります。この事態は深刻なものとして捉えられており、ファッション業界では「痩せすぎているモデルは採用しない」というルールを設けるなどの対応がなされています。

バレエの世界ではまだまだ体重制限を設けたり、具体的な体重やBMIの数値を示して強制したりという時代錯誤な指導がなされているところもありますが、ローザンヌ国際バレエコンクールでは年齢ごとにBMIの下限を設けており(これでも十分に危険なレベルではありますが)、痩せすぎなバレエダンサーを健康不良として審査を通過させないなどの動きが見られます。

分類

DSM-Ⅴでは食行動障害および摂食障害群に分類され、さらに以下の型に分類されます。

神経性やせ症 (摂食制限型/過食・排出型)
神経性過食症
過食性障害

どんな症状が見られるか

神経性やせ症

拒食タイプの典型例では、体重や体型に強くこだわり、やせ目的のダイエットや激しい運動がエスカレートします。本人は危機意識に乏しく、ボディイメージの歪みのため、痩せているにも関わらず適切な食事や治療を拒み、さらなる痩せと体重減少を望みます。月経は止まり、体力が低下しているにもかかわらず活動的です。
必ずしも食欲は低下しておらず、肥満恐怖のために食事が食べられない状態です。
正常下限を下回る痩せがあり、成人ではBMIが15kg/m2未満になると最重度と診断され入院適応です。
精神症状としては飢餓の影響で抑うつや不安、強迫性が増強し、また根底には自尊心の低下が存在しています。病識がないため、親や医療者との関係が悪化し治療が受け入れられないことも多く、体力低下に伴い日常生活にも支障が生じてしまいます。

神経性過食症

一方過食タイプでは、食物への欲求が抑えきれず、「むちゃ食い発作」と呼ばれる過食に苦しみ、それよる体重増加を打ち消すための代償行動(自発性嘔吐や下剤乱用など)も見られます。やはり体重や体型が自己評価を左右しており、わずかな体重増加も許せない、というような完全癖傾向が見られることもあり、そのわずかな変化に悩まされ、自分の容姿を嫌悪して憂うつで不快な気分に支配されます。体重は過食と代償行動のバランスで決まり正常体重のこともあるため、周囲には気付かれにくいことも多いです。

過食性障害

制御できない過食(むちゃ食い)のエピソードを繰り返すことによって特徴づけられます。しかし、過度の運動や自己誘発性嘔吐や下剤使用、絶食などの不適切な代償行動を伴わない点で神経性過食症とは区別されます。代償行動を欠くため、体重は増加傾向にあり肥満が多くみられます。
神経性過食症と比較して摂食パターンや体重増加についての不安や自責感は低いとされていますが、むちゃ食いのない肥満患者との比較では、過食をコントロールできず、肥満恐怖が強く、身体への不満足感も大きいという報告があります。

摂食障害のシグナル

⚫︎ 食べ物に対しての態度がおかしい(食べてはいけない食材、食べてもいい食材を決めたり、食べる時間や順番にこだわるなど)
⚫︎ 体重増加を気にして標準体重以下であっても、もっと体重を減らそうとする
⚫︎ ダイエット中であると主張する
⚫︎ 容姿や体型に異常にこだわる
⚫︎ 食べることが関わる社交の場に出なくなる
⚫︎ カロリーをほとんど摂らなくなる。フルーツや野菜、サラダやゼリー飲料のような健康的なもの、ノンカロリー、低カロリーのものしか食べない。
⚫︎ 体重を減らすために過度に運動をしたり、ダイエット薬を服用したりする
⚫︎ 自分自身は食べないが他の人のために食べ物を買ったり料理して食べさせようとする
⚫︎ 食べ物のことが頭から離れない
⚫︎ 体重増加への恐怖が強く標準体重以下に保つことに頑なにこだわる。
⚫︎  痩せてきたことや体重が減ったことを家族や周りの人に指摘される。またそこに自分の価値を見出す。
⚫︎ 食べるはずではなかったものを食べてしまった時には食べ吐きをする。

摂食障害かな?と気づいたら

摂食障害を専門とする治療者を見つけること自体が困難です。摂食障害かな?と気がついたら、まずはできるだけ早く近隣の医療機関を受診してください。小学生や中学生はかかりつけの小児科を、高校生以上は成人精神科、心療内科、内科(内分泌科、消化器内科など)を受診してください。診察の結果、さらに専門医療機関を紹介されるかもしれません。
このページにも摂食障害の相談窓口や受診案内を掲載していますので参考にしてください。

専門家の支援が必要なとき

摂食障害が原因で、家族や友人との食事の時間がストレスになるようであれば専門家に支援を求めることが大切です。身体的な健康問題がある場合はすぐに医療機関で診察を受ける必要があります。
特にBMIが15を下回っている場合は最重度であり入院治療が適応となるレベルです。

回復に必要なケア

身体的ケア

とくに神経性やせ症では患者本人の病識がないまま身体的に重篤な状況に陥っている可能性があります。まずは生命の維持に必要な栄養の投与やバランスの取れた体内環境を整えるためのケアが必要です。
飢餓状態や不健康なやせ状態から脱出し、生命の危険を取り除く必要があります。
脱水や低体温、循環器呼吸器や脳神経系、内分泌系の異常ほか、さまざまな身体の危機的状況をもたらす可能性があるのが摂食障害です。

精神的ケア

摂食障害の中核にある低い自己評価や完全主義なども含めた心身面の症状への対応も不可欠です。治療効果のエビデンスが確立したものは多くない中、治療効果が検証されガイドラインに記載されているものもあり、いずれにしても専門家の元で行うことが必須です。
また、特に若年の神経性やせ症の患者に対しては、家族への介入の有効性のエビデンスがあり、国内外のガイドラインでも、家族に対するサポートまたは家族療法を行なうことが推奨されています。家族支援として、疾患に対する正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、疾患の結果もたらされる諸問題・諸困難に対する対処技能を高める心理教育が必要です。さらに、摂食障害の患者をケアする家族の負担は時に非常に大きく、親自身が疲弊していたり、メンタルヘルスを害していたりする場合も多く配慮が必要です。必要な場合には、親や家族にもセルフケアを推奨し、心理・社会的なサポートを提供する必要があります。

社会的ケア

摂食障害が長期化したときは、社会的ケアを必要とします。仕事や学校など社会生活に支障をきたしている時、他者とのかかわり方がわからなくなっている時にはケアを受けることが大切です。

わたしたちにできること

まずはこのページを見たり書籍を読んだりして、摂食障害について正しい知識を持つことです。重要なことは、インターネット上にあるさまざまな情報の中から根拠のある情報をしっかり見極めることです。
このページにも、引用元・参照元サイトとして信頼性のあるリンク先を掲載しているので参考にしてください。また、実際に自分自身や家族、周りの方に気になることがあった際にどこへ相談、受診をすればよいかも記載していますので参考にしてください。

相談窓口、受診案内

摂食障害全国支援センター相談ほっとライン より

faq_leafletダウンロード

摂食障害情報ポータルサイトより

consultation_facility_list_3-8ダウンロード

参考・引用元サイト

日本摂食障害学会 http://www.jsed.org/
摂食障害ポータルサイト https://www.edportal.jp/index.html
摂食障害情報ポータルサイト(専門職の方)https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/index.html
日本摂食障害協会 https://www.jafed.jp/
マゼンダリボン https://www.magentaribbon.net
英国王立精神医学院(日本語サイト)https://www.rcpsych.ac.uk/mental-health/translations/japanese

作成:セーフダンスアソシエーションメディカルチーム

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次